ゆきちゃんの世界
  * * * 阪神淡路大震災ボランティア * * *
地震に思う

1995.3.

   みえない裏をみる(本物を感じる会通信3月号)  YUKI.I 

●核・芯の大切さ

 何事も芯が大切です。
細胞にも核があり、太陽系にも太陽があり、銀河系にも中心があります。
家にも大黒柱がいます。 勿論、一人一人にとっては自分自身が自分の主人公ですし、
体にとっては心臓、心にとっては魂こそ芯になるものではないでしょうか。
芯は表からはみえないものですから、裏といえるでしょう。 裏とは、昔から心のことを指します。
          
●大黒柱で助かる

 昔の日本家屋は、大黒柱を大きな礎石の上に他の柱よりずっと太くし、家の中心にすえ、
他の柱を周りにバランスよく配置した家づくりをしてきたそうです。
みえないけれど、家の中心にあって全体を支えている柱が大黒柱だったのです。
 今回の地震でも、会員のMさんのお父様と伯母様も大黒柱のお陰で助かったそうです。
救援に行く道々、古い家が全て到壊しているのをみながら、ご実家に到着して、二階が無い
のを見たときは、一階に寝ている二人はもうだめだと思われたそうです。
ところが、大黒柱が支えてくれたのか、二階は隣地へとずり落ちて、お二方とも無事だったそうです。
        
●コストと生命とどちらが大切か

 今回の地震でも高速道路や、ビルの鉄筋がむきだしになり、あめのように曲がっているのが見えました。
 テレビでは横の帯針の間隔が10cm以内でないと危険だと解説をしていました。
しかし私はビルや高速道路を支える柱の断面図なるものをみて、その柱に中心となる鉄骨がないのをみて愕然としました。

 問題は、帯芯の間隔などより、むしろ中央に芯となる鉄骨がないのが問題ではないかと私
には思われました。
芯に鉄骨があれば、芯と周囲の縦針とが、共にバランスを保って結びあい、間につめたコンク
リートも帯芯も支えあって、そんなに簡単にはまがらないだろうと思われたのです。
そんな生命を守る強度への思いやりが、経済合理化やコスト削減等で軽視されてしまったので
はないでしょうか。

●親父の復権

 私はかねてより夫を現実的な人だと思っていましたが、この非常時にまさに頼もしさを発揮してくれ、あらためて夫をみなおしました。
地震のおきた時も冷静に、私たちを守ってくれる力強い声に安心しました。そして危険だからと暗い中を自ら懐中電灯をさがしにいってくれました。
 そして、明るくなって、早速かたづけ始めた私に「すぐに、水を沢山ためろ」と声をかけて
から、一番にローソンに買い物にいってくれました。
その時は、ローソンの中もメチャクチャでしたが、まだ誰もおしかけていない時だったので売ってくれたのです。
そして、普段とても食べたことのないカップラーメンや即席食品、お菓子や缶詰等も沢山買ってきてくれました。
 又4日目でポンプがなおって水が出だすまで(もともと井戸水)ポリタンク(畑用に水用タン
クが沢山あった)にせっせと子供と一緒に六甲学院の中の山の水を運んできてくれました。
  おかげでひっくりかえった家の大掃除もできました。
 そこで、地震・雷・火事・親父の復権と思った次第です。
確かに、おこらすと恐い働きを持つ親父は表の主人であり物質的な大黒柱でしょう。
 しかしながら私が思うには、本来の精神的な大黒柱は奥にまします奥さんではないでしょうか。
 女性こそ、目立たないけど日々暖かく家族を支え、人を良くする食と心を司り、いざという時も家族を固く結びつける求心的な役割を持っている、まさに見えない大黒柱だと私は思っています。

●芯のあるところに求心力の結びの力が働く 
 
 何事にも、中心になるもの、核となるものがいるのではないでしょうか。芯も大黒柱も表面からはみえませんし、その働きも表だってつぶさではないかもしれません。
 
 しかし、表からみえていないところに、大事な中心があり、要の働きを持っているのでは
ないでしょうか。
その中心こそ、求心力で全てをつなぎ結んで、支えているものではないでしょうか。
 建物の表面からはみえないけれど、芯になる鉄骨や基礎や地盤こそ建物を支える土台です。
土台なくしては、砂上の楼閣です。それは、全てに通じる真理ではないでしょうか。

●見えない裏(心)のレベルを高く   
 
 私は今回の地震で、つくづく、意識がいつも高いレベルにいることの必要性を感じました。
私は普段から体は現実に働かせていても、心はいつも魂のレベルでいる時、なんの心配なく
守られて在ることを感じていました。
 
 又、心(裏)のレベルがふと落ちて、気が迷ったり、いらいらと気のかき乱される時は「魔がさす」とでもいうふうに事故に出あったり怒りも出やすいと感じていました。
 そして、体と心は一体ですから、意識のレベルを高くし、魂に深く近づいて感じたことは、
それなりに成就しますし、すぐ行動にも移せるものだと思ってきました。
今回ボランティアの形も様々あるでしょうが、自分自身をしっかりと持ち、思いやりのある方は、
余裕のでき次第すぐ自ら他の方々のために動いておられるなと思わされました。           
◆心の芯でとらえる

 よく、思っててもできないという人がいますが、思いがエゴの服を着ているのかもしれません。
又、表面で思っているだけでは、行動の変化にまでつながりませんし、体と切り離された頭だけ
で考えては、考えあぐねるだけで行動には移せないように思われます。
 あるいは誰かにたよる思いがあっては、自主性も真の自由もありません。
全ては、自分の内にあると私には、思われるのです。
心の芯にふれる理解や、魂の光に出会うような琴線にふれるような感じ方ができれば、変革は一瞬にしてなされると私は
思っています。

◆無事を信じて

 今回の地震でも、関係者の中で、一番情報のわからなかった方は長田区のDさんでした。
昨年の暮れ以来うちの会で、神道の興味深いお話などをしていただいて皆熱心に聞かせて
頂いていた方です。
 2月11日の祝日にも本物を感じる会の例会で「神道の話」をしていただこうと予定していました。

Dさんのお家はたいそう古く、母屋は江戸時代以来の二百年以上の日本家屋で、大層心配を
しておりました。
そして、まさに家は全壊しておられたのです。 じつは、地震の当日、うちの会の奥さん方と一緒にセミナ−のあと、そのDさんのお宅にいく予定をたてていたんです。
 地震が、半日遅かったら、会員の方たちと一緒に私はあの世にいってたかもしれません。
その新しい瓦をふいたばかりの、古い大邸宅は、1階がみごとに押しつぶされていました。

◆助けあってこそ

 Dさんは5日目にようやく消息がわかったので、6日めにうちにある新しい下着や衣服や日用
品、水や米や電気釜と味噌汁まで、いろいろ車につみこんですぐに伺いました。
ところが、まっすぐ行ける道が、大開のところで地下鉄が崩れて道路が陥没し、大きく南に
迂回しており、暗くなって入る道がわからなくなりました。
 そこで後ろのタクシーの運転手さんに聞くと「よっしゃ、ついといで」とどんどん先導してくれて、焼け落ちたり、崩れたビルの間をぬって、ちゃんと案内をしていただけました。
天の助けとうれしかったです。

◆全壊のなかでも動じない
 
 Dさんは、母屋でなく、手前の平屋の長屋におられました。
 Dさんのお話では、揺れたとたんに屋根がドサっと落ちてきて、顔の上15cmぐらいにすぐ障子らしいものがあり、体のまわりすぐにも何かあるという事態でこれは大変なことになった
とすぐに思われたそうです。
そしてすぐさまご神名 “アマテラスオホミカミ” (彼は神道の方)を唱えておられたそうです。
  そして周囲からも「助けて、助けて」という声が沢山聞こえていたので、「あっ、これではとても助けてもらえないな」と思い、レスキュー隊がくるまで2、3日楼城せねばならないかと思い、体力温存のためにと、もう一度布団を被って寝たそうです。                         

◆光に導かれて
 
 そして、つぎに目がさめると、光がみえて、そろそろと動いてみるとちょうど道がついているかのようにはって進めて、薄い天井を破っただけで、屋根も丁度一人分だけ板が割れて瓦も落ちていて、平屋の長屋でしたから、全く無傷で屋根の上にでれたそうです。
又、その日に限り、こたつでうたた寝して、服を着たままで寝ておられたそうです。
じつは、いつものように布団をしいて寝ていたら、みごとにつぶされていただろうとおっしゃっていました。
 そして、隣の方々を助けるのに瓦をはぎ、板を割り、天井を破り、人をよんで冷蔵庫を動かしたり、家具を動かしたりして、ようやく、両隣の方々を助け出されたのですが、人工透析がいる程の重体や、重傷であっても、皆さん幸いに生命はとりとめられたそうです。
 又、古い母屋のご両親もお兄様が、のこぎりをもって二階から助けだされたので、一家そろってご無事だったそうです。
又、不思議なことに、門のすぐ脇のガレージとお兄様の新しい2階建ての家をちょうど避けるように母屋も長屋もそれぞれが反対方向に倒れたので、すぐ住む家にも困らなかったそうです。
しかし、Dさんのお宅の一画だけでも8人の方がなくなられたそうです。

◆YUKI.I家は
 
 私の住むマンションの被害はほとんどありませんでした。
地震の揺れ方も、うちでは南北の方向性をもっていたようで、不思議なことに南北に作り付けの食器ダナには、ガラスコップが並び、引戸もあいたままだったのに、ひとつも落ちて割れてませんでした。
  又東西においた北向きの食器棚は上部が飛んでおちましたが、幸い乾物ばかりでした。
ただ、食堂や私の部屋のスチール製の組み立ての本棚は全て倒れて本が全部とびだして足の踏み場もありませんでした。
 又東西においた木の本棚は中の楽譜も重かったせいか倒れませんでした。
すぐのグランドピアノも北に15cm動いただけで傷一つなく助かりました。
一番幸いしたのは、家具のガラス戸を全てはずしていたことです。
これは、神戸にひっこしてきて4年近くなりますが、ただはめるのがめんどうではめていなかっただけなのです。
 本当に何が幸いするかわかりませんね。
 長男の部屋の家具は倒れなかったのですが数台ものコンピューターのパソコン器具の谷間で寝ていた長男は、ひとつが落ちてきたのですが、顔のすぐ横だったけど、幸い全然あたらなかったそうです。
 次男の部屋では、本だながちょうど、寝返りした後に倒れてきて、反対から、その棚にひっかかるようになにかがおおってくれたので、上の方から、本など落ちてきたのもあたらずにすんだそうです。
ふたりとも、まあ、怪我ひとつなくと肝を冷やし、 運良く助かったことを心から感謝した次第です。

 電話のかかりにくい中、沢山のお見舞いの電話をいただきましたことを、ここにあらためて感謝御礼申しあげます。
又数々の見舞いのお手紙を始め、品々やお金までお送りいただきまして恐縮いたしております。
改めて感謝申しあげます。全て有り難くボランティアの活動に使わせていただきます。
本当に有難うございました。
 Sおじさん、2日めにはるばる尼崎から自転車で無事を訪ねにきて下さって有難う。本当にうれしかったです。
 江川さん3日めに、はるばる尼崎から電気ポットを始めいろいろいっぱい乗せて、危険なデコボコ道をオートバイで駆けつけて下さって有難う。涙が出るほどうれしかった。
 十年ぶりでお会いしたのにゆっくりお話する間もなくて、又ゆっくりコーヒーを飲みにいらしてくだ
さい。
  ほんと皆さんの心の暖かさに、沢山沢山触れることができてとても幸せに思っています。

◆避難の方々は今

 まだまだ避難された方々にとって、心の春はやってきません。
とにかくほっと落ち着ける場所がいります。仮設住宅にあたるのを心待ちなさっている方も多い
です。
でも、これまで3万円位の家賃で誰にもたよらず、年金暮らしで一人でしっかりと暮らしてこられた多くのお年寄りが、仮設より他にいく場所もなく将来の不安はおおい隠すべくもありません。
 「大浴場、大食堂であとは小さな個室でいいから、この灘に一人住まいの老人用大型マンションを建ててくれんかなあ」と多くの老人は夢を語っておられます。
「そうよね。それやったら私も入りたいわ」とあいづちをうちながら、老人を大切にし、老人を幸せにする行政こそ、働く壮年を安心させ、何のために働くのかを勇気づけて、そこに集まってくるでしょう。 
そして 若者も、安心して、未来の夢へとはばたき邁進できるのではないかと思わされました。  

■行政の方々に

 今、又市民の声もきかずに行政が独断専行で、区画整理や高層ビルの都市計画構想を発表しています。
 そんなに急がなくても、もっと市民の声と知恵も聞いて下さい。考慮にいれて下さい。
 こんな大震災ですから、非常時態の法律や条例もどんどん現場にそくして変えて、急がなくていいようにして、ゆっくり皆の声を聞いて反省して下さいませんか。
 市民と一緒の新しい町づくりを考えていきませんか。
何がこれまでの人災をひきおこしたのか、新しい町づくりは自然と対話のできる、生命が喜びあい生かしあえる町になってほしいと思います。
  これまでと同じ発想で、再びこのような人災をくりかえすのでなく、21世紀の新たな町づくりには新しい考えでとりくんでいっていただきたいと私は思っています。

    意識を いつも  
       明るく 高く  持っていよう
   
   世の中に  どんな  策謀や黒雲が
      渦巻いていようとも

     明るい光の前に  闇はありません

   内なる宇宙を信じて  
     皆とつながっていることを信じて 
        自ら  光を  発信してゆきましょう
                                        
                             1995年3月12日 発行責任 YUKI.I


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